歴史の記憶、再び灯す 生麦事件参考館が〝プレオープン〟中 地域有志ら再開館に向け団結へ

浅海さん宅の一部に建てられている生麦事件参考館
幕末に起こった歴史的事件「生麦事件」を今に伝える生麦事件参考館=横浜市鶴見区生麦=で、地元有志による再生の動きが活発化している。
昨年始動し、横浜市の助成事業などに挑戦するなど同館の再開を目指す「生麦事件参考館リユースプロジェクト」では、今年4月からプレオープンを実施。5月24日と25日には2日間で計60人以上が訪れ、旧来の来館者に加え、初めて訪れる人やボランティア希望者も現れるなど、地域内外からの関心が高まっている。
幕末の事件、個人が伝承
生麦事件参考館は、1862年に現在の鶴見区生麦で起きた「生麦事件」に関する史料を展示する私設の資料館。1994年、地元在住だった浅海武夫さんが、事件の歴史を後世に伝えたいとの思いから自宅敷地内に開館した。
館内には錦絵や古文書、亡くなったイギリス人・リチャードソンに関する記録など、浅海さんが私費を投じて集めた資料約150点を展示。長年にわたり自ら解説役も務めていたが、2023年に浅海さんが亡くなったことを受け、閉館を余儀なくされていた。

国内外から集められた貴重な資料が並ぶ館内
地域の力で「再び開く扉」
閉館後、地域住民や企業、大学関係者、鶴見歴史の会などの団体が、「リユースプロジェクト」を発足。再開を模索し、施設の改修や再開に向けた活動を進めてきた。
再開に向けては、老朽化が進む施設の改修費捻出などのため、横浜市の助成制度「まち普請事業」にも応募。昨年度は惜しくも次点に終わったものの、今年度の1次コンテスト免除を獲得しており、最終2次コンテストの突破を目指し活動を続けている。

発足以来定期的に実施している生麦事件参考館リユースプロジェクトの会議(生麦地域ケアプラザにて開催の様子)
プレオープンで広がる輪
本格再開を目指す中、同プロジェクトはこの4月からプレオープンを開始。
来館者の中には「昔訪れたことがある。もう一度来られてうれしい」と語る再訪者や、「以前から来てみたかった」という新規の来場者の姿も。中には「ボランティアとしてかかわりたい」という声も寄せられ、プレ開館前にはなかったさまざまな期待が寄せられている。
プロジェクトメンバーの一人で、鶴見歴史の会の酒井晴雄会長は「プレオープンを通じて、机上の空論ではないアイデアや意見が出始めている」と手応えを実感。「さまざまな輪も広がっており、さらに具体的な活動を進めていきたい」と話した。
6月の開館は14日㈯・15日㈰、28日㈯・29日㈰に予定されている。
なお、同プロジェクトでは公式ホームページを立ち上げ、活動の様子などの発信も行っている。公式サイトはこちら。

来館者にはメンバーらが解説なども行っている

今なら、生前の浅海さんが生麦事件について語った講演会の映像も見ることができる