入船公園で練習する塩田さん

 鶴見駅西口のスペイン料理店「PEKOPEKO」のオーナーシェフ・塩田寛樹さん(42)が、あさって5月28日に東京都杉並区の馬橋稲荷神社で行われる「パエリアサミット2023」のパエリアコンクール・プロの部に挑む。

 9月にスペインで開かれる国際パエリアコンクールの日本代表選考を兼ねる大会。入船公園の協力を得て、練習を重ねてきた塩田さんは「目指すは優勝」と意気込む。

70cmの大鍋で炊き上げたパエリアバレンシアーナ

国際コンクールは60回超の由緒

 パエリアは、さまざまな食材と米を一緒に炊き上げるスペイン料理。

 日本では魚介類のイメージだが、発祥地のバレンシアは海がなく、肉や豆を使うのが伝統的なスタイルとされる。

 パエリアコンクールは、バレンシアの郷土料理としてのパエリアを競うもの。食材から調味料、70cmの大鍋など、すべて同じ環境のもと、その完成度で勝負する。

 国際コンクールは60回を超える歴史ある大会で、世界各国から職人たちが集まるという。

スペイン料理店「PEKOPEKO」オーナーの塩田さん

相性合ったスペイン料理 “文化”に感動

 飲食関係の前職時代、イタリアンやフレンチといったさまざまな食にふれるなかで出会ったスペイン料理。日本にもスペインバルが出始めたころ、「きちっとしたフレンチなどより、かしこまらずに作れる雰囲気が自分に合っていた」と塩田さんは振り返る。

 33歳で初訪問したスペイン。すでに携わっていたスペイン料理の概念が変わるきっかけになったのはこの時だ。

 競うのではなく、レシピを共有し、店休日はみんなで練習する。各店とも得意料理があり、一店舗ではなく、まち全体をめぐり食を楽しむ。

 そんな食文化の在り方に感動した。「スペイン料理を広めたい」。そう思い、自分の店を構えた。新型コロナが拡大した2020年のことだった。

「攻めすぎて焦げた」という出来栄えのパエリア。スペインのボンバ米を使い、うさぎや鶏肉のほか、モロッコいんげんや豆を混ぜて炊き上げる

伝統つたえ、文化を広める

 「どう広めたらいいかと模索する中で出会ったのがパエリアコンクールだった」と塩田さん。

 スペインの伝統文化とも言えるパエリアバレンシアーナ。広めるにはぴったりの料理だと、コンクールの門を叩いた。

 昨年、手始めに参加したアマの部。入賞には至らなかったが手応えを感じ、今年はプロの部への挑戦を決めた。

完成品は毎回、来園者や公園スタッフに配る

薪火での練習場所探し

 出場にあたり、ネックとなったのは練習環境だった。

 本番の調理で使用するのは薪火。焦げも重要視され、火加減が物を言うが、都市部では簡単に火を使えないため練習場所がなかった。

 自宅近くの鴨居の河川敷でたまたま火が使えたが、店からは遠く、機材を運ぶのも苦労するなかで協力を申し出たのが入船公園だった。

 防災キャンプや縄文土器講座など、公園のイベント時に合わせることで練習が可能ではないかと、両者を知る地域住民の仲介によるもので、完成したパエリアは来園者などに配ることで無駄も防げた。

チラシを手に来場を呼びかける塩田さん

最終調整は「前向きな失敗」

 本番前、最後の練習となった日、「この前は焦げがつかなかったので、火加減を強く、攻めすぎて失敗した」と苦笑いだった塩田さん。出来上がったパエリアを応援に来た知人らに振る舞った。

 湿度など、その日の天候で調整が必要となる火の感覚をイメージしながら、「前向きな失敗」と話した。

◇ ◇ ◇

 今年のコンクールには、前回優勝者ら全国から強豪12チームがエントリー。塩田さんは、旧知の料理人とのコンビで頂点を目指す。

 「鶴見のまちのポテンシャルを高めるためにも、優勝を狙いたい」。PEKOPEKOのパエリアが武器になるように、その腕をふるう。

■参考=NPO法人全日本パエリア連盟HP(こちら


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